大久保泰
千葉県我孫子市で約60年かけて花を咲かせたメキシコ原産の「アオノリュウゼツラン」が22日、伐採された。高さ8メートルまで伸びた珍しい植物を見ようと市内外から多くの人たちが訪れていた。
この日、所有者の椎名恒久(ひさゆき)さん(82)の家族らがチェーンソーやノコギリで切断した。台風シーズンが近づき、倒れるのを防ぐためだ。7月末の台風8号が接近した時からロープで支えていた。椎名さんは「できるだけ多くの人に見てほしかった。このあたりが頃合いかな」と話した。
隣の家の河合正治さん(72)は5月初旬、2階の寝室の窓から、高さ2メートルほどの株から花茎が伸び始めるのに気づいた。以来、「どんな花が咲くのか」と楽しみに見守ってきた。7月中旬から淡い黄色い花が咲き始め、下の方から高さ8メートルほどの所まで約1カ月咲いていたという。
旧水戸街道沿いの空き地に育ったアオノリュウゼツランは、通りかかる人の目に留まり、話題のスポットになった。都内から来た40代の女性は、河合さんに「メキシコに4年住んでいてリュウゼツランはあったけれど、花を見たことがないので来ました」と話したという。
2階の部屋から見せると翌日、お礼にと、リュウゼツランの葉脈から作った魔よけと、お酒のテキーラを持ってきてくれた。リュウゼツランはテキーラの原料として使われている。
伐採作業も見届けた河合さんは「2階から見ていると、多くの見物人がスマホで写真を撮るためにしゃがんで仰ぐようにしているので、拝んでいるように見え、神々しさを感じた」と話す。枯れた花の一部を記念にもらったという。(大久保泰)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル